境界線の引きかた


友達って何?
知り合いって何?



中学を卒業して初めての夏休み
一人ぶらりと駅前を歩いていた時だった。


目の前には同じ中学だった麻衣子が私の知らない誰かと歩いていた。
「あれ、麻衣子?久しぶりー」
嬉しくなって声を掛ける。

「久しぶりだねーどうそっちの学校は?」
屈託ない笑顔で声を交わした。

ちょっとの歓談の後

「「じゃあ」」

とどちらとも無く別れたのだが。
すれ違って何歩か歩くと先ほどの麻衣子達の声が聞えた。

”同じ中学だったの?”
と聞かれた麻衣子は間髪入れずに

”うん、知り合い”



知り合い?麻衣子は私の事を”知り合い”と表現した。

休み時間一緒にいたじゃない?
泊りにも行ったよね?
みんなも一緒だったけど。

友達じゃなかった?
これが中学の時だったら”友達”って言ってくれたよね。
そんなことを考えたけれど、もしかして”友達”って思っていたのは私だけだったのかも。

今から思うとそんなに自分から話をしなかったから。
皆の話す面白い話に頷いていただけだったから。

そっか、だから私は友達じゃなかったんだ。
そう思った瞬間に目が潤っときたのが分かった。
堪らなくなって、空を見上げた。
何処までも青く広がる空の下、まるで私一人しか存在しないような
そんな気分になってしまった。


そして、ハンカチを出そうとカバンの中に手を入れる。
ハンカチよりも先に触れた、堅くて冷たい物質。

高校へ入り、顔と名前が一致する間も無く、増えていったアドレス。
一体この中に何人の”友達”いるのだろう。

今度こそハンカチを探りあて、そっと目頭に当てた。




”知り合い””友達”

境界線は何処にあるのだろう
ハンカチを握り締めながら、そう空に向かって呟いた。