電車通学

罪な友達2

圭吾君は焦ってる?それに比べ桜は――。

「浅野君が言えないのは、無理もないよ。だってあんなに必死だったもんね。でもこういう事って後で分かるより、話ちゃった方がずっと気が楽ってもんよ」
余裕の桜は圭吾君に了承をとった後、事の経緯を話てくれた。

私は初めて聞く話に驚いたなんてもんじゃない。
じゃあなに? 桜と圭吾君はあの日私より前に会ってたって言うことなの? 呆けてしまったものの。

「ごめん、情けなくって話せなかった」
しゅんとなった圭吾君の言葉で我に返り、慌ててブンブンと首を振った。

だってそうでしょ、私を探しに高校まで来てくれたんでしょ。
それって、私に会いたくてだよね。
これが嬉しくないはずがない。
私ばっかりって思ってた私にとったら飛び上るほど嬉しい事なんだから。
それに背中を押してくれた桜だって。

その後は、んっ後『も』か、桜の独壇場で、圭吾君はいろんな事を突っ込まれてタジタジだったみたい。
中でも驚いたのは涼子さんの事が出てきた時。
正直これには私が焦った。
だってそれこそ私も話していなかったから。
圭吾君固まってるし。
だけどそれはやっぱり桜なんだよね。
上手に話をするもんだから、すっかり桜のペースに乗せられている。
途中大丈夫だった? って圭吾君は私に話を振ってくれたけど、本当に大丈夫だったよ。って。
だって、あの時の涼子さんの言葉、胸に響いたもん。
言われて当然だったし、何より前に進めたし。
感謝してるんだよ、ほんと。
この話はもうおしまいとまた桜に遮られた。
そのあとも散々話した桜は「またね」と嵐のように去っていった。
桜のお陰で少し寿命が縮まりそうだったけれど、いつもと違った圭吾君の姿が見れて楽しかったかも。


ぽつりと圭吾君が
「やっぱ苦手かも」と呟いた。
でもそれはちっとも嫌な風に聞こえなくて。案の定次に続いた
「って言いうか、良い奴だよな」って頭をかきながら笑ってくれた。
私は大きく頷いた。
圭吾君がコーヒーをおかわりして、ちょっと2人で桜の話をして、喫茶店を出た。

もう大丈夫だよね。
周りをみても生徒らしきひとはいない。
駅に着くまでもちょっと不安だったけれど、誰にも会うことなく電車に乗れた。

そして、圭吾君といつものように家の近くの公園に立ち寄った。ベンチに座ると
「黙っててごめんな」
ってもう一度謝ってくれた。
そんなに謝ることじゃないのに。ちょっと胸が苦しくなる。

私はその場の雰囲気を和ませようと
「だって、それだけ私の事を必死で探してくれたんでしょ」
って言ったら。
真顔で

「必死だったよ。今もね」
って。

自分でふった言葉なのに、返ってきた言葉に私の頭は沸騰してしまった。
「じょ、冗談だってば」
呂律の回らない言葉でそういうと
「郁は分かってないんだ」
って。
分かりました、分かりましたとも。
「丁度いいや」
圭吾君は携帯を取り出した。
メールボックスを開くとそこには桜のアドレスが。
ってメールまで知っていたことに驚きだ。
これにはちょっと嫉妬した。
私の顔を見た圭吾君は、内緒はもう嫌だからねと。


私の前に出されたそれには『今日の郁』と名うった一枚の写メだった。
あの時の私だ。桜ってばこんな事してたのね。

――今日、郁の所にいったのはこれだよ。これに嫉妬したんだ。――

そう言って指さしたのは私の後ろに写っていた大山の姿。
何で?
私はそう口にしていたんだと思う。

「だって、郁をみてこんな顔して……」
尻すぼみになるその言葉。
言われてみれば優しい目だ。

私はそっと圭吾君の耳に口を近づけて

「これはね、写メを撮った桜を見ているんだよ」
って教えてあげた。

圭吾君はそれっきり黙ってしまった。
何だか難しそうな顔してる?
そんな圭吾君もいいなって思ってしまう私は重傷かも。
それにしても、驚いた。
圭吾君が嫉妬してくれるだなんて。

でもね。
私の方がいっぱい嫉妬してるんだよ。
2人で出かける時はいつも。
圭吾君を見ている視線いっぱい感じる。
学校でも……
きっとね、一緒の高校に行ってたら嫉妬しっぱなしで顔が変わっちゃうかもしれない。
だけど、圭吾君と一緒に通えたら――。
そっちの方がいいに決まってるけどね。

帰り際、今度は俺の友達にも会ってみる?
って聞かれた。

「勿論」って答えたんだ。
その日がいつだかわからないけれど、圭吾君の友達に会わせてくれるって思ったら何だか新しいドキドキが始まったみたいだった。