迷いみち

3話

小学校の行事は一年中。
春の遠足に始まり、夏のプール、秋の運動会に冬の学校祭り。
その他にもこまごまとした行事があって、あれよあれよと過ぎて行く。
子供の頃はもう少し時がゆっくり進んでいたような気がしたものだが……
気がついたらもう桜の舞う季節になっていた。

去年の参観日、息子の発言に驚いた。
自分の身だしなみの構わなさに気づかされたけれど、人間そうは変わらなかったりするもので
。あれから数回といった所だろうか気にする日があったのは。

新しい学年になり、またいつもの日常の始まり。
晃平は下級生が出来ることを楽しみにしているようで、分からないことを聞かれたら親切に教えてあげるんだと張り切って登校していった。
恭平はというと、案外小心者で誰と同じクラスになるかが気になる様子。
そんなこと言ったって直ぐに友達が出来る癖に。
晃平に遅れる事、3分。元気で行きなさいと背中を軽く叩いて送り出した。

とは言ってもちょっとは気になるのが親心というものだろうか。
初めが肝心って言葉もあるから。
お決まりのコーヒーブレイク。
テーブルに肘を着いて、元気な顔で帰ってくるようにと願ってみた。

始業式は授業がないのであっという間に帰ってくる。
家の前の道路がざわつき始め子供たちが帰ってきたようだ。

駐車場を勢いよく軽い足取りで掛けてくるのは晃平だ。
ただいまー大きな声で玄関を開ける晃平。
大丈夫ね。
ほっとして出迎えた。

「おかえりなさい」
玄関で出迎えて息子の顔をみて確信、やっぱり大丈夫そう。

「お母さんあのね、みっちゃんもよう君も同じクラスだったよ。それでね、えーっとえーと。」
晃平は靴も脱がずに玄関で両手を振りながら話始めた。
次男だからか、恭平がこの年の頃はこんな風じゃなかったよな、子供っぽさがいっぱいの晃平。自然と手を頭に乗せて靴を脱ぐように促した。

「もう直ぐお昼にするから、先に手を洗ってね」
晃平はまだ話足りなかったようで、話すことを忘れないようにだろうか、何か呟きながらランドセルを置きにいった。

焼きそばでいいかな
先週の特売で買いためたはずの材料も昨日までの春休みでもう消化してしまう。
明日は買い物にいかなくちゃだなそんなことを考えつつキッチンに立った。
2階から降りてきた晃平は私の後ろに回りながら、今日の出来事を話ている。
時折頷きながら作業を進める。
折角だからと晃平に野菜を洗って貰って。
でもやっぱり口は止まらなくて、そうなるとすっかり手が止まってしまう。
私がやった方が早かったりするのだけど、ここは我慢だね。
野菜を切って、麺を炒めて水を入れて蒸しあがる頃に玄関のドアが開いた。

「ただいまー」
恭平の元気な声が聞えた。
気がつかないうちに自分の顔が笑っているのが分かった。
「お帰り」
そんな時は声も優しい声がでるから不思議だ。

一旦火を止めて恭平の顔を見るといい笑顔をしていた。

「母さん聞いて、凄いんだよ今度のクラス。隆一も遼も太一もいるだよ。きっとクラス対抗のドッヂやったら間違いなく優勝だよ。」
朝の顔は何処へやらだ。
「良かったね。もうお昼だから手を洗ってきなさい。お昼食べながら話聞かせてね」
話を遮られてちょっとむくれながらも
「はーい」
と返事をして晃平同様、ランドセルを置くため、リズム良く階段をかけあがっていった。
恭平を待つ間、晃平と焼きそばをたっぷり盛ったお皿を並べた。

「「「いただきます」」」
皆で揃って手を合わせて、焼きそばを食べ始めた。

「担任の先生は誰だったの?」
今度は私から聞いてみた。
だけどそう問いかけてみても幼稚園のように頻繁に出入りするわけではないので知っている先生はしれている。だけど聞いてしまうのよね。

「ぼくは田代道子先生だったよ。去年2組だった先生。」
晃平の担任は田代先生か、何となくだけど分かるかも、後で遥香ちゃんのママに聞いてみるか確か去年2組だったから。一瞬で頭にそんなことが。
「そっか、先生の言うこと良く聞くんだよ」
晃平は口いっぱい焼きそばが入ったまま大きく頷いた。

「恭平は?」

「俺の先生は新井先生、下の名前は忘れたけれど男の先生。去年からきたんだって。面白そうな先生だったよ」
面白そうな先生か、去年の山田先生がビシッとしていただけに大丈夫かしらと。でも男の先生だからいざという時は締めてくれるかななんて。
「面白そうな先生で良かったね。でもあんまり調子に乗らないのよ」
そう言ったら
「それはどうだろうな〜」
とまたもや調子に乗って。

そんなおだやかな日々に包まれていた。